データの読み方

土地の「前年比+360%」は値上がりではない|㎡単価が面積で動く仕組み

埼玉県東松山市の土地は、ある年の㎡単価が前年比+360%と計算されます。相場は動いていません。取引された土地の大きさが変わっただけです。実データで確かめます。

公開 2026-08-27

当サイトの一部のページでは、前年比が「—」と表示されます。データが無いからではありません。比較しても意味がないと判断して、あえて出していないからです。

その理由を、実際の数字で説明します。

埼玉県東松山市の土地に起きたこと

東松山市の土地取引を年ごとに集計すると、㎡単価の中央値はこう動きます。

㎡単価の中央値取引された土地の中央値面積件数
20193.1万円/㎡280㎡83
20204.0万円/㎡220㎡101
20211.3万円/㎡350㎡161
20221.1万円/㎡390㎡171
20231.6万円/㎡360㎡94
20240.9万円/㎡405㎡138
20250.8万円/㎡530㎡171

2020年から2025年にかけて、㎡単価は4.0万円から0.8万円へ、5分の1になっています。市場が5分の1になったのでしょうか。なっていません。

右の列を見てください。取引された土地の中央値面積が220㎡から530㎡へ、2.4倍になっています。

そして直近1年では中央値面積が530㎡から265㎡へ戻り、㎡単価は0.8万円から3.5万円に跳ね上がりました。単純に計算すると**前年比+360%**です。これも値上がりではありません。

なぜ面積で単価が動くのか

土地には、面積に比例しない費用と価値があります。

上下水道の引き込み、道路への接続、造成、測量、登記。こうした費用は、100㎡の土地でも500㎡の土地でもそれほど変わりません。100㎡なら100で割ることになり、500㎡なら500で割れます。当然、小さい土地ほど㎡あたりの負担が重くなります。

需要側でも同じです。総額が抑えられる小さい土地は買える人が多く、500㎡を超える土地は買い手が限られます。

結果として、同じ地域でも小さい土地ほど㎡単価は高く、大きい土地ほど低くなります。これは相場とは別の、面積そのものが持つ性質です。

だから、面積構成が変わると単価が動く

ある年に市街地の小さい宅地が多く取引され、次の年に郊外の広い土地が多く取引されれば、それだけで㎡単価の中央値は半分になります。相場はまったく動いていなくてもです。

土地は特にこれが起きやすい種類です。マンションの専有面積は25〜80㎡程度に収まりますが、土地は100㎡から1,000㎡以上まで一桁違う幅があります。

種別によってどれくらい違うか

当サイトの掲載対象で、前年比を「比較にならない」と判断した割合を実際に数えました。

種別前年比を出せた面積構成のため出せなかった
中古マンション463件12件(1%)
一戸建て847件87件(9%)
土地728件206件(22%)

土地は5件に1件以上が、そもそも前年と比較できません。 一方、中古マンションはほぼ影響を受けません。専有面積のばらつきが小さいためです。

参考までに、東京都新宿区の中古マンションは次のように推移しています。

㎡単価の中央値中央値面積
2019105.0万円/㎡25㎡
2021114.3万円/㎡30㎡
2023120.0万円/㎡25㎡
2025140.0万円/㎡30㎡

面積が安定しているため、単価の動きはそのまま相場の動きとして読めます。

当サイトの扱い

中央値面積が前年から25%を超えて動いた場合、前年比を表示しません。 該当する場合は「—」と表示し、その理由(前年の面積と今年の面積)を併記しています。

数字が出せるのに出さないのは不親切に見えるかもしれません。ですが「+360%」と表示して読者に誤った印象を与えるより、出さないほうが誠実だと判断しました。

読むときに気をつけること

土地の相場を年ごとに比べたいなら、㎡単価ではなく面積帯を揃えて見てください。 当サイトの各市区町村ページには面積別の単価を掲載しています。

他所で土地の㎡単価ランキングや前年比を見かけたときも、同じ疑いを持ってください。 件数と面積が併記されていない数字は、この落とし穴を踏んでいる可能性があります。

当サイトが件数と中央値面積を必ず表示しているのは、読者が自分で確かめられるようにするためです。

集計方法の全体はデータの出典と作成方法に、面積と単価の関係は面積が小さいほど㎡単価が高くなる理由に書いています。