データの読み方
売り出し価格と成約価格は違う|ポータルサイトの価格をそのまま相場と考えない
不動産ポータルに出ている価格は売主の希望額です。実際に成約した価格とは性質が違います。なぜ差が生まれるのか、どちらを相場として見るべきかを整理します。
公開 2026-08-26
不動産の相場を調べるとき、多くの人がまず見るのはポータルサイトです。地域と条件で検索すれば、いくらで出ているかがすぐわかります。
ただし、そこに並んでいるのは売り出し価格です。売主が「この値段で売りたい」と設定した希望額であり、実際にその金額で売れたことを意味しません。
売り出し価格に含まれるもの
売り出し価格は、次のような要素で決まります。
- 不動産会社の査定額
- 売主の希望(ローン残債、次の住まいの資金計画)
- 値引き交渉を見込んだ上乗せ
- 売り急いでいるかどうか
最後の2つが重要です。日本の中古住宅の取引では、購入申込時に価格交渉が入ることが一般的で、売主側もそれを見込んで少し高めに設定します。つまり売り出し価格には、はじめから交渉の余地が織り込まれていることが多いのです。
さらに、売れなかった物件も掲載され続けます。相場より高すぎて動かない物件は、掲載期間が長くなる分だけ検索結果に居座り続けます。結果として、ポータルで見える価格の分布は、実際に成約する価格より上に寄りやすくなります。
成約価格はどこで見られるか
実際に成約した価格は、国土交通省が「不動産取引価格情報」として公表しています。不動産の登記をした人へのアンケート調査をもとに集めたもので、四半期ごとに更新されます。2021年からは、宅地建物取引業者から報告される成約価格情報も加わりました。
これは「実際にいくらで取引が成立したか」のデータなので、希望額でも査定額でもありません。
ただし、そのままでは扱いにくい形をしています。
- 1件ずつのレコードで、地域ごとの傾向にはなっていない
- 所在地は町丁目まで、面積は丸められている(個人が特定されないための加工)
- 取引時期がばらばら
- 競売や関係者間の取引など、通常の売買ではないものも混ざっている
当サイトはこれを地域・物件種別ごとに集計し、中央値と推移として見られるようにしています。
どちらをどう使うか
両方を見るのが正しい使い方です。役割が違います。
成約価格で「水準」を掴む。 自分が調べている地域で、実際にどのくらいの単価で取引されているのか。これが判断の土台になります。売り出し価格だけを見ていると、相場より高い水準を基準にしてしまいます。
売り出し価格で「いま何が出ているか」を見る。 成約価格データは公表までに数か月かかるため、直近の動きは反映されていません。また、実際に買える物件がいま市場にあるかどうかは、ポータルでしかわかりません。
売却を検討している場合はこうなります。まず成約価格で地域の水準を確認し、次にポータルで競合になる物件がいくらで出ているかを見る。その2つの間に、自分の物件の条件(築年数、階数、方角、リフォームの有無)を当てはめていく。査定を受けるのはその後です。先に水準を知っておくと、査定額が妥当かどうかを自分で判断できます。
成約価格データを読むときの注意
中央値と自分の物件は違います。 中央値は「ちょうど真ん中の取引」を示すもので、条件の良い物件はそれより高く、悪い物件は低くなります。当サイトが築年数別・面積別・改装の有無別の単価も出しているのはこのためです。
件数を必ず見てください。 直近1年の取引が10件しかない地域の中央値は、たまたま大きな取引が1件あっただけで動きます。当サイトでは件数が30件に満たない市区町村のページを作っていませんが、掲載している地域でも件数は必ず表示しています。
公表の遅れがあります。 取引から公表まで数か月かかります。相場が急に動いている局面では、データは実態より遅れて見えます。
まとめ
- ポータルの価格は売主の希望額。交渉余地が織り込まれ、売れ残りも含まれる
- 成約価格は実際に取引が成立した価格。国土交通省が四半期ごとに公表している
- 水準は成約価格で、いま出ている物件はポータルで。両方見る
- 中央値だけでなく、件数と条件別の数字まで見る
各地域の成約価格は市区町村ごとのページから確認できます。